利用者の心身の活性化をもたらすアクティビティ。
介護・医療の現場では、利用者の心と体を活性化させることを目的とし、さまざまな活動(アクティビティ)を提供しています。
アクティビティの役割・目的は?アクティビティの組み立て方、有効的なアクティビティ、誘い方、効率よく安全に運営する方法などを、詳しく解説していきます。
Contents
アクティビティとは?役割・目的は?
介護におけるアクティビティとは、利用者の心身の活性化をもたらすための活動です。
利用者の余暇時間の充実度に大きくかかわってきます。
アクティビティは大きく分けると、散歩や体操などの「運動」、カラオケや音楽鑑賞、料理や園芸などの「趣味」、手芸、囲碁、トランプなどの「ゲーム」があります。
アクティビティの役割と目的
アクティビティの役割・目的は、活動を行うことで自然に指先や身体を動かすことができ、脳の活性化が期待できることが挙げられます。
また、楽しみを見出すことで好奇心を刺激し、生きがいを再確認することもできます。特に大切なのは、こうした活動を利用者が「楽しいなあ」と感じることです。
心の充実感やハリが、日常生活に対するモチベーションにつながります。
アクティビティの組み立て方
利用者の目的や性格、介護施設の規模によって、利用者が楽しめるアクティビティ、有効なアクティビティが異なります。
利用者みんなで楽しめるアクティビティはどのように考えればいいでしょうか。
利用者目線に立って組み立てる
利用者が充実できるかをシュミレーションしながらアクティビティを組み立てます。
注意しなければいけないのは、アクティビティが介護職員目線になっていないかという点です。
「これなら面白いはずだ」と思っても、介助が必要な利用者が介護職員と同じように楽しめることは少ないでしょう。
また、ワンパターンに陥って利用者が退屈に感じてしまうこともあります。利用者向けにアレンジしていくことが大切です。
第2に利用者それぞれの個性を大切にすることです。
大勢いる利用者全員に目を配るのは非常に難しいですが、たとえば同時に少人数のグループで複数のアクティビティを開催して、利用者に好きなところを選択してもらうなど、アクティビティを自分で選べるようなしくみを工夫します。
また、アクティビティは基本、自由参加の施設が多いと思います。利用者が参加したければ参加するという自己決定の流れを忘れてはいけません。
利用者にとってよかれと思ってもしつこく誘えば強制になり、重荷になってしまう場合もあるからです。
こちらの思いを強制するのではなく、利用者の自主性を重んじるようにします。
介護度の高い利用者にも「できること」をしてもらう!
アクティビティに参加する利用者の中には、自分でできることが限られる介護度が高い人もいます。そうした利用者に対しても、「できること」をしてもらうことが大切です。
事前に利用者と話し合いをしておき、「どこまでができて、どこからができないか」を把握します。
そのうえで「ここまでは先に私たちでしておいて大丈夫ですか?」と合意をとってから、利用者ができない作業をあらかじめ進めておくようにします。また、職員もゲームなどに本気で参加するようにします。利用者に気をつかって「わざと負ける」のはNGです。
職員からすれば利用者のためを思ってしたことであっても、結果的に利用者の気持ちをしらけさせてしまいます。
あらかじめハンデを決めておくのは構いませんが、そのうえで手を抜かないことです。
個別対応(リクエストに応える)
特に入所介護サービスの場合、利用者は集団生活を送ります。
介護施設での生活においては、なかなか自分のしたいこともできず、行ってみたい場所にも自由に行くことができません。
しかし時々は、利用者それぞれの希望に応えることで、利用者の生きがいになり、生活にハリがでるようになります。
「生まれ故郷にもう一度行きたい」「コンサートに行きたい」など、利用者はそれぞれに大小さまざまな要望を持っています。もちろん、これらすべてが実現可能とはいきませんが、できるだけ個別の要望を叶えることで、利用者の満足度も高くなります。一人ひとりにアンケートを取り、家族も巻き込んで個別対応を行っていければ理想的です。
有効なアクティビティは?
散歩や体操などの「運動」、カラオケや音楽鑑賞、園芸などの「趣味」、編み物や刺しゅうなどの「手芸」、囲碁や将棋、トランプなどの「ゲーム」が主なアクティビティの内容ですが、他にはどんなアクティビティが有効でしょうか。行われているアクティビティの一部を紹介します。
子どもとの交流
多くの利用者は幼い子どもに心を癒されます。子どもと接する時間を意識的につくると、「次もまた会いたい」という日々の活力になります。近くの保育園などの園児と合同でクリスマス会やひなまつり会などを開催するのもいいでしょう。
利用者の中には、遠くに住む孫を思い出して涙を流したり、普段は硬い表情の利用者が優しい笑顔を見せたりすることがあります。
子どもとの交流は利用者にとって大きな刺激になります。
料理
料理をすることは、順序立てて作業をしていくため脳機能によい刺激を与えます。
入所系の施設の場合、特に女性は料理をしなくなることで、自分の社会的役割がなくなってしまったと感じることが多いようです。定期的に料理教室を開催することで、煮物や郷土料理など、若い職員が利用者に教えてもらうこともできます。
フラワーアレンジメント
フラワーアレンジメントでは、季節の花を仕入れ、自由にアレンジしてもらいます。
できあがった作品は居室や自宅に飾ってもらうことができるので、利用者にも人気があります。
また、100円均一のうちわや小物入れに、造花を飾りつけても満足度の高い仕上がりになります。
アクティビティへの誘い方
アクティビティを開催しても、利用者の性格によっては消極的でなかなか参加してくれない人もいます。
そうした利用者への働きかけのヒントを紹介します。
利用者に「役割」を持ってもらう
アクティビティを開催しても、残念ながら遠慮してしまう利用者も多くいます。その中には、単に興味がないというだけでなく「できないと恥ずかしいから」「今はできないから」と自信を失ってしまっているケースもあります。そうした場合は、無理に参加させるのではなく、利用者に役割を持ってもらうようにはたらきかけます。
利用者が若い頃得意だったことにチャレンジしてもらい、自信をつけてもらうこともひとつの方法です。利用者自身が「今でもできる」と自信を持つことができれば、さまざまなことに積極的に取り組んでくれるようになります。消極的な利用者に対して、昔どんなことが得意だったのか、どんな趣味があったのかを家族から聞き出すなどして、「教わる姿勢」を見せるとよいでしょう。
少し上の目標を設定
どんなにたくさんのアクティビティを考えても、それが利用者の「できること」のレベルより低いものであれば、利用者は楽しみを見出すことができません。
逆にあまりにハードルの高いアクティビティだと利用者の自信を奪ってしまうことになるので、「少し頑張ればできる」ものを考えるようにします。
たとえば、工作のアクティビティでは、少し手先が動きづらい利用者に対しては、紙を切るなどの細かい作業の下準備をしたうえで、貼りつける作業をしてもらう……といった具合です。得意なこと、できることを把握し、少し上の目標を設定し喜びを感じてもらいます。
効率よく安全に運営する方法
アクティビティの運営は、介護職員にとって大きな負担になります。運営の際の実践的なコツを紹介します。
時間を最大限活用する
アクティビティを充実させるためには、職員の人数と時間の確保が必要です。職員には、アクティビティ支援以外にも、さまざまな仕事があります。
時間をかけるべき仕事にたっぷり時間をかけ、徹底的に効率よく仕事をすることが大切です。
コミュニケーションの時間をつくらなくても、入浴や食事などの介助時にコミュニケーションをとることができます。
その積み重ねから、個別対応のヒントを得られることもあるのです。工夫をして成功させたアクティビティで利用者の喜ぶ顔が見られれば、介護職員のやる気も一層高まるはずです。
ぜひ職員同士でモチベーションを高め合い、充実したアクティビティ支援を行ないましょう。
ボランティアを活用
団体で外出するときは個別での対応とは異なり、複数の利用者を、慣れない環境の中で見守らなければなりません。
施設内ではないため、予想しないトラブルが起こる可能性も高まります。そこで介護職員には、利用者を通常よりもしっかり見守ることが求められます。
効率的に、安全を確保するかを戦略的に考える必要があります。
地域のボランティアにも積極的に協力してもらい、作業的な仕事だけでなく外出時の利用者の見守りなどに参加してもらうのも良いでしょう。
まとめ
- アクティビティとは高齢者が集まって楽しみながら交流を深めること、折り紙やクイズ、体を動かすようなものまでさまざまですが、単調になりがちな生活に変化を与える目的だけではなく、利用者様の力を高め、生活の質を上げていきます。
人との交流など人々をつなげる重要な機会、身体機能の向上や脳の活性化、ストレス解消などの効果が期待できます。
その人に合ったさまざまなアクティビティを用いて、生活改善や活性化に繋げるアクティビティは高齢者にとって重要な役割となります。