病院では、人の健康や生命に関わる医療スペシャリストたちが、それぞれの専門に応じた仕事をしています。働いている方の職種は?クリニックとの違いは?病院で働くメリット!などをまとめてみました。
Contents
病院の種類と特徴
「病院」とひとくちにいっても、その役割や機能、専門分野などによって内容はさまざまです。
どんな病院があるのか、種類や特徴を知り、病院の基本的な情報を整理して自分が働きたいのはどんな病院なのか把握しておくことが大事です。
国立病院
厚生労働省や文部科学省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人労働者健康福祉機構など「国」が開設した病院。地域の医療モデルとして高度専門医療を行うなどの役割を担うほか、多種多様の診療科目、幅広い機能を持つ比較的大規模な病院が多くあります。国立病院機構に属する病院などの医師、看護師、職員は公務員ではないですが、基本的に国家公務員に準ずる待遇や規程があります。
大学病院
大学病院とは国立や私立の大学付属病院など、文部科学省の大学設置基準という省令に基づいて開設された大学の付属病院。大きく分けて3つの役割があり、「臨床(診療)」「教育」「研究」の役割を担っています。診療内容や対象とする患者は幅広く、多くの大学病院は医療機関の中核となる特定機能病院になっていることが多いです。また、他の病院や診療所の紹介が必要であるなど、受診するには一定の条件を満たす必要があります。
大学病院は先端的医療の推進が大きな目的ではありますが、患者さんと向き合う日々の診療も大切な任務です。
公的病院
国や都道府県、市区町村、地方独立行政法人、日本赤十字社、済生会、国民健康保険団体連合会など、営利を目的としない公的団体を運営母体とする病院。公費の補助を受け、地域に根差した医療を行います。一般的な医療から高度医療まで幅広く手掛けている病院が多くあります。厚労省の調べによると全国の病院のうち約20%が公的病院、残りの80%は個人や医療法人が運営する民間病院、という割合です。
一般病院
一般病院は公益法人、医療法人、社会福祉法人などが設立する病院。
医療法人とは都道府県知事の許可を受けて設立される法人で、個人の経営ではない一般の民間病院のほとんどは医療法人です。社会医療法人、特定医療法人などの区分があります。医療法人のほかにも、学校法人が運営する私立大学の付属病院や、財団法人や宗教法人の運営する病院、JR病院のように企業が従業員とその家族のために運営する病院など、さまざま法人が病院の運営母体となっています。
個人病院
医師が医療法人を作らずに個人で経営している病院をいいます。比較的小規模の病院が多く、働く方にとってはアットホームな雰囲気で働きやすいというメリットがあります。
こんな人たちが働いています
病院には、医師や看護師など、患者の診療や治療に直接関わる医療スタッフ以外にもさまざまな職業の人が活躍しています。
医師
「医師免許」を取得し、さまざまな診療科で患者の病気やケガを治療します。医師には、患者を治療する臨床医と、病気を研究する研究医の2つのタイプがあり、多くは臨床医となって、医療チームの責任者として患者の治療にあたります。技術だけでなく、人間性とコミュニケーション能力が問われる仕事です。命を守る仕事のため、6年間大学で学び、国家試験に合格しても、研修や臨床経験も必要なため、一人前になるには長い時間がかかります。
看護師
看護師は、主に患者の心身のケアと、医師の治療や診療のサポートを行います。
入院患者の場合、検温・検査・投薬・退院するまでのさまざまなケアや支援を、医療スタッフと連携して行います。
慢性的に人手不足なので、資格取得後、スムーズに就職できることが多いようです。
薬剤師
医師の処方により薬を調剤するのが主な仕事です。患者の症状やアレルギーなどを考慮して、副作用が出ていないかチェックしたり、より適切な薬や飲み方などを医師に提案することも大切な役割です。
理学療法士
病気・ケガ・障がい・加齢などで身体に障害を抱える人に、治療体操や運動、マッサージ・電気刺激・温熱などの手段を使って、患者さんの運動機能を回復させる仕事です。義手・義足・車イスなどの装具に関する訓練のサポートも行います。
作業療法士
心身に障害を抱える人に対して、運動機能や日常生活に必要な作業ができるように、工芸・手芸・園芸・絵画・玩具操作などの作業技法によるリハビリを行います。精神的・心理的な安定を目的として、精神面でのサポートも行うところが、理学療法士の仕事と異なります。
臨床検査技師
医師が病気の診断や治療方針について判断を下すための検査を行っています。患者の血液・尿・便・痰などを検査する検体検査と、心電図・脳波測定など患者自身から直接情報を得る生理機能検査の2つがあります。正確かつ迅速に検査データを提供できるよう、細心の注意をはらい、日々の業務に当たっています。
診療放射線技師
放射線を人体に対して照射する仕事で、エックス線やCTスキャン・MRTなどの機器を扱います。装置の取り扱いや安全管理などを担う専門的な医療技術者です。骨やその周囲の組織の異常、病巣を映す画像撮影、ラジオアイソトープ診断のための検査、がんや肉腫細胞をなくすための放射線照射や放射線管理などを行います。近年では、放射線を使用しないMRI(核磁気共鳴画像)を扱うなど業務範囲が広がっています。
社会福祉士
社会福祉士(医療ソーシャルワーカー)は、身体的・精神的に障害を抱えていたり、社会的に疎外されているなど、さまざまな理由によって健全な日常生活を送ることができなくなった人の相談に応じ、各種制度・施設の利用方法などのアドバイスをしながら問題解決に当たります。
治療や療養に伴う、お金のこと、生活のこと、仕事や学業のこと、介護のことなど、医療では解決できない困りごとも解決できるよう、相談支援を行っている。
保健師
人間ドックや総合健診でわかった病気や異常について説明し、病気を未然に防ぐため、日常生活における健康管理の仕方を指導したり、患者の悩みや説明を聞きながら相談にのります。
医療事務
患者の受付、案内、カルテの管理やレセプトの作成、医療費の請求などの事務、その他さまざまな業務を行います。患者と、医師・看護師・臨床検査技師など医療スタッフとの橋渡しの役割も担っています。
管理栄養士
医師・看護師・薬剤師・理学療法士などと協働して、患者の栄養サポートを行います。療養や個人の身体状況・栄養状態に応じた、健康保持のための栄養指導、また特別な配慮が必要とされる給食の管理など、専門的知識・技術をもって行います。
調理師
管理栄養士が考えた献立をもとに、入院患者の食事を作ります。
病院内の厨房での調理のほか、調理補助スタッフに指示をしたり、献立作成や給食材料の発注などを行うこともあります。資格がなくても調理師の仕事はできますが、調理師と名乗れるのは調理師国家試験に合格した人のみです。
病院と診療所の違いは?
病院、診療所、クリニック、医院、と様々な呼び方がありますが、医療機関は医療法により「病院」と「診療所」の2種類に分類されています。
「診療所」に分類される医療機関は、名前に「病院」と付けることができません。そのため、名前に「クリニック」や「医院」、もしくは「○○内科」、「○○歯科」などの診療科が付く医療機関があります。これらも「診療所」の分類です。
病院と診療所、医療法ではどのように定義付けされているのか、違いを説明します。
入院施設のベッド数
・病院:患者を入院させられるベッドが20床以上ある医療機関(「総合病院」の場合は、100床以上)
・診療所:患者を入院させられるベッドが19床以下の医療機関(入院施設がなくてもOK)
スタッフ数
・病院:医師の数も最低3名以上(40人の外来患者様に対して医師は1人、16名の入院患者様に対して医師は1人)が必要で、看護師、准看護師、看護補助者に加え、薬剤師や栄養士、放射線技師、作業療法士、理学療法士など、診療科ごとに適切な医療行為が行えるよう、専門のスタッフの配置が義務付けられています。
・診療所:医師が1人で患者様を診るケースが多く、医師1人が診る患者の数に制限はありません。診療所で入院施設がある場合は、看護師、准看護師、看護補助者は必要ですが、入院施設がない場合は医師1人でも開業することが可能です。
施設の規模
・病院:難病・重病の治療、緊急搬送などの状況にも対応するため、様々な設備が整っており、高度な、もしくは先進的な医療行為も行うことができます。診療科が複数ある施設も多いです。
・診療所:軽いけがや病気、慢性疾患などの治療が中心で、地域の「かかりつけ医院」としての役割が大きいと言われています。
これらの「診療所」「クリニック」は病院とは地域連携室を通じてつながっており、症状によっては医師が紹介状を書いて、病院に患者を紹介することがあります。初診料は病院も診療所も均一ですが、診療所などからの紹介状を持たずに病院を受診すると、初診料の他に自己負担の「特別料金」が請求されます。
働くメリット
・スタッフ、設備が充実している病院では、研修会・セミナーが頻繁に開催され、診療科目が多いため様々な症例に多く当たることができます。そのため幅広い医療の知識・臨床経験を得られる環境が整っています。
・教育体制や研修制度がしっかりしている病院も多く、新人には先輩がマンツーマンで指導・教育するプリセプター制度や、キャリア開発を目的としたクリニカルラダー制度があるため、足りない知識・技術は何なのか、問題点・改善点を明確にすることができるので、現場から長く離れていた方や勤務年数が短い方も安心して働くことができます。
・患者数が多く、それに伴い業務量や管理数が増えるため、手当も高く設定されており、給与が高水準なのが一般的です。社会保険や退職金制度も充実しており、福利厚生など待遇面がしっかりしている病院も多くあります。
まとめ
- 病院には、いくつかの種類があり、自分が働きたいのはどんな病院なのか、そして病院と診療所の違いも把握しておくことが重要です。
さまざまな専門職の方たちが活躍していますが、病院で働く人たちのすべてに共通するのが、病気やケガに悩まされている患者の力になりたいという気持ちです。国家資格を取得した人だけでなく、医学の知識がなくても医師や患者をサポートすることができます。自分なら、どんなことができるのか、病院で活躍できる仕事を探してみましょう。
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