療育のプロフェッショナルとして子どもたちと向き合いながら働く児童指導員。
子どもと直接関わりをもち、心身の健やかな成長とその自立を支援する職種です。
児童指導員の任用資格を取るには?どんな職場で働くの?仕事内容を詳しくまとめてみました。
Contents
児童指導員任用資格とは?
児童指導員とは、放課後等デイサービスや児童発達支援センター、重症心身障がい児を対象とした児童発達支援事業に配置が求められる厚生労働省の定めた職業です。
子どもにとって身近な存在となるため、個々の気持ちに寄り添いながら平等・公平な対応が求められるでしょう。
児童指導員の任用資格を取るには?
そもそも「児童指導員」という名の資格は存在しません。
その代わりに児童指導員として働くための任用資格があります。
児童指導員は任用資格なので、児童指導員を配置する事業所に所属している間だけ「児童指導員」と名乗ることができます。
その児童指導員任用資格を得るためには大きく分けて2つの方法が挙げられます。
大学・大学院で取得する場合
学校教育法の規定による大学・大学院において社会福祉学、心理学、教育学もしくは社会学を専修する学部、学科を卒業する必要があります。
任用資格の証明は、一般的に卒業証書と成績証明書によって確認されます。
また地方厚生局長等の指定する養成施設(福祉系の専門学校)を卒業した場合も任用資格を得られます。
実務経験で取得する場合
高等学校もしくは中等教育学校を卒業している場合、2年以上児童福祉事業に従事すれば任用資格を得ることができます。
また3年以上児童福祉事業に従事し、厚生労働大臣または都道府県の知事から認定されても児童指導員の任用資格を取得できます。
そのほかにも小学校・中学校・高等学校教員免許を持っていて、厚生労働大臣または都道府県の知事から認定された場合や、社会福祉士、精神保健福祉士のいずれかを取得している場合も同じように任用資格を得られます。
また2019年4月からは「幼稚園教諭」の資格を有する場合も児童指導員として認められることとなりました。
ただし任用資格とは「その職種になるための資格を有する」というものなので、任用資格だけでは児童指導員とは名乗れません。
児童指導員として働き始めてから初めて「児童指導員」を名乗ることができます。
また働くためには公立の施設の場合は公務員試験を受験する必要がありますし、私立の場合もその施設が行っている採用試験を受ける必要があります。
どんな職場で働くの?
児童指導員は、どのような場所で働いているのでしょうか。
事業ごとの特徴を紹介します。
児童発達支援
障害のある未就学の子どもに対し、年齢に応じた遊びを通じて表現力や感性を養い、子どものできることを広げる支援を行います。
重い障害のある子どもに対して居宅訪問型児童発達支援を行う場合は、満18歳までが対象です。
子どもの発達状況や特性に応じて、音楽療法や運動療法を取り入れるなどの取り組みを行っている事業所などもあり、事業所の方針や理念によってさまざまな支援が提供されています。
放課後等デイサービス
放課後や学校休業日に、障害のある小学生・中学生・高校生に対して、生活する技術・技能の向上や地域交流の機会提供などの支援を行います。
保護者が就労している時間帯に子どもの安全な居場所を確保する一面があるのが特徴です。
障害児入所施設
心身に障害がある~18歳の子どもが入所する施設で、日常生活の指導や知識・技能の教育を行います。
継続的支援が必要と判断した場合には、満20歳に達するまで利用期間の延長も可能です。
知的障害や聴力・視力に障害のある子どもが主に入所する福祉型障害児入所施設と、医療的ケアが必要な子どもが入所する医療型障害児入所施設に分かれています。
保護者による養育が難しいために入所するケースが全体の約3割ですが、虐待からの保護を目的とした児童相談所経由での措置入所も一定数存在するのが特徴で、1日単位の契約で利用できるショートステイを提供する施設もあります。
乳児院・児童養護施設
保護者がいない子どもや、家庭の事情で養護が必要な子どもが入所する施設です。
乳児院は0歳児・1歳児が、児童養護施設は2歳から18歳までの子どもが入所対象です。
家庭に近い環境で、生活習慣の確立や学習指導、自立への手助けを行います。
子どもと寝起きを共にしながら成長に合わせた支援を行うため、保護者代わりとしての一面もみられます。
入所の経緯を踏まえて、信頼関係を基盤とした心理的なケアが重要視される傾向です。
児童指導員の仕事内容
知的障がいや身体障がいを持った児童への療育や、さまざまな事情によって家族による養育が困難になった子どもたちへのケースワークなどが挙げられます。
児童養護施設では入所する子どもの健全な成長を視野に入れ、生活のさまざまな場面での支援・指導にあたることから、保護者代わりとしての一面を持つのが特徴です。
事業所の運営方針により、個別支援計画や集団活動などにおける特色あるプログラムが組まれる事例も多いです。
児童発達支援管理責任者やほかの専門職と連携して仕事を進める機会が多いことから、協調性とあわせて積極的に意見・提案を行う姿勢も求められます。
主な仕事内容について、具体的に紹介します。
日常生活の指導
遊びや学習といった場面をきっかけに、子どもが日常生活や社会生活を円滑に営めるように支援します。
子どもの発達・成長の姿を見極め、適切なタイミングで助言指導を行い、健全な成長を支えるためには重要です。
児童発達支援をはじめとする通所型施設では、保護者や学校・関係機関との連携を取り、子どもの障害や特性に応じて発達上の課題達成を目指します。
一方、児童養護施設などの入所型施設では、起床から食事、入浴、就寝まで身の回りの世話を通じて生活習慣の確立を図っています。
自尊心や主体性の尊重を意識して、子どもと十分なコミュニケーションをとることも、最善の利益を考慮した支援を継続する上では大切です。
個別支援
子ども一人ひとりの課題に応じて、短期目標や長期目標を設定して個別支援を進めていきます。
例えば、学校の宿題や家庭学習の手助けを通じて学習習慣を定着させたり、日々の活動を通じて感情や行動をコントロールする力を養ったりすることです。
障害のある子どもに対しては、障害の内容に応じた支援を行い、保有する感覚の活用や認知機能の発達を促します。
児童養護施設では家庭的養護を推進する一環として、集団生活の中でも個人ごとの空間・持ち物を確保する、すなわち個別化への取り組みがなされています。
施設を出所した後のアフターケアも、自立を支援するためには必要不可欠です。
集団生活への適応支援
子どもの自立心や社会性を養う一環として、日々の集会や給食などを通じて集団生活のルールを身につける指導を行います。
障害がある子どもを支援する際は、障害の特性を考慮して活動プログラムを作成しますが、障害別・発達課題別のグループ分けも効果的です。
行事の企画・運営にも、児童指導員が関わる機会が多いです。
年齢や境遇が異なる子どもとの交流を通じて協調性を育む効果や、人間関係や物事の折り合いのつけ方を身につけるきっかけにもつながります。
学校や幼稚園・保育園と役割を分担しながら効果的な支援を行うために、児童発達支援管理責任者や管理者と共に情報交換を行うこともあります。
子どもや保護者からの相談対応
児童指導員は子どもとの関係性が近いため、生活や進路などの相談を受ける機会が多いです。
1人の児童指導員が複数の子どもと関わるため、平等な対応を前提としつつも個人の気持ちに寄り添った対応が求められます。
児童発達支援など未就学児を対象とする際は、子どもの思いを大切にした上で、伝えたいことを言葉や体の表現で引き出す工夫が必要でしょう。
保護者から相談を受けた場合、心情を受け止めながら専門的な助言を行う姿勢を持つことが、悩みの抱え込みを防ぐだけでなく、子どもとの関係性を改善するためにも重要です。
乳児院・児童養護施設では、施設長や児童相談所と連携して親子関係の再構築を支援します。
まとめ
- 児童指導員は、児童だけではなくその家族もサポートすることができます。
個性豊かな児童を相手にする仕事であるため、毎日予想外のことも起こるかもしれませんが、やりがいのある仕事です。
近年では、子育て支援に関するニーズがとても高まっており、まだまだ不足していると感じている方も少なくありません。
これからますます需要が高まる仕事と言えるでしょう。