介護で考えられる問題には何があるのでしょうか。
口数の少ない利用者、不安が強い利用者など、さまざまな利用者の状況を想定して会話例等を紹介します。
クレームなどにつながった会話を振り返り、改善したい言葉や理想的な話し方を探っていきます。
それぞれの「まとめ」をしっかり押さえるようにしましょう。
Contents
コミュニケーションの取り方のポイント
日々の家族との関係が訪問時の会話に表れることがあるので、利用者だけでなく、家族との関係にも配慮した
会話のあり方を考える必要があります。
利用者:伊藤さん(70)との会話例(訪問介護利用)
伊藤さん:また、嫁が仕事が忙しいと言って食事をつくらないのよ。息子と孫のご飯ぐらい用意してもいいと思わない?
ヘルパー:そうなんですか。大変ですね。
伊藤さん:仕方がないから、息子と孫には「コンビニで買ってきなさい」と言っているのよ。私が作れたらいいんだけどね・・
ヘルパー:そうですね、お嫁さんが忙しいなら仕方ないですね。でもコンビニ弁当は飽きてしまいますよね。
伊藤さん:そうでしょ!栄養も偏るし、よくないわよね。まったくウチの嫁ときたらね・・・
このなにげない相づちが原因で偶然孫にそのより取りを聞かれていて、「コンビニ弁当は飽きてしまいますよね」の一言が苦情に繋がってしまいました。
理想的な話し方
伊藤さん:また、嫁が仕事が忙しいと言って食事をつくらないのよ。息子と孫のご飯ぐらい用意してもいいと思わない?
ヘルパー:そうなんですか。大変ですね。 伊藤さん:仕方がないから、息子と孫には「コンビニで買ってきなさい」と言っているのよ。私が作れたらいいんだけどね・・
ヘルパー:最近私もコンビニ弁当を食べますが、惣菜もいろいろ揃っていますよ!
伊藤さん:あら、そうなの。私も一度食べてみようかしら。
お嫁さんに触れるのではなく、ヘルパー自身がコンビニ弁当を購入し感想を述べるのはこれまでと一味違ったコミュニケーションとなります。
話題を全く変えるのではなく、それに付随した話題となるので会話に違和感がなく、伊藤さんも話題に入りやすくなります。
クレームが入った時の対処法
デイサービスを利用後、着替えや持ち物が紛失する事態を耳にする。本人や家族にとって大切な衣類を、当たり前に持ち帰れるように配慮する。
利用者:小林さん(85)の家族との会話例(デイサービス利用)
小林さん家族:今日着替えがバッグに入っていなかったんだけど・・
介護職員:確認してバッグに入れていると思うのですが、もう一度確認していただけませんか。こちら側でも捜しみます。
(翌日の電話)
小林さん家族:やっぱりないんだよ。そちらはどうですか?
介護職員:こちらも捜しましたが、見つかりませんでした。
小林さん家族:・・・・・・。
小林さんのご家族は介護職のそっけない返答に返す言葉が見つからなかったのでしょう。
もっと誠意ある対応を期待して、翌日に再度連絡を入れてきたご家族の気持ちは決して穏やかではなかったはずです。
理想的な話し方
(翌日の電話)
小林さん家族:やっぱりないんだよ。そちらはどうですか?
介護職員:実は夕べ、職員間で話しあいをもち、小林さんの入浴などにかかわった介護職員から聞き取りを行いました。また、当日利用された方のお宅全てに連絡しましたが、見つかりませんでした。本当に申し訳ございません。
小林さん家族:そこまでやってもらえたんですね。母の為に頑張って確認してくれてありがとう。
施設側ができるだけのことをした結果、見つからなかったのであれば電話で対応した介護職員の態度を見直してくれるかもしれません。このような対応が当たり前にできていれば、苦情がここまで大きくなることもなかったでしょう。ご家族が何を求めているのか、自分が家族だったらなど、相手の立場に立って誠実に考えてみることが大切です。
まとめ
- 誠実にサービスを提供している場合でも、思いがけずクレームが来るといったことがあります。
また、介護施設や福祉施設の内部の状況については、外部から見えづらく、また、利用者が十分に主張できない場合があるなどの事情があり、問題が発生した場合に、不信感を持たれやすくなってしまいます。
マニュアルもケアの基本として、とても大切なものです。
しかしマニュアルだけで、どのような人にも接することができるかと言えば、それは難しいでしょう。なぜなら、人はそれまで築いてきた生活の歴史・価値観そのものが、その人なのです。
日々のケアには、その人を知ることへの努力が必要です。
そのうえで、なぜこのような行動がするのが、発言をするのかと考えることが大切なのです。
同じ人はいません。一人ひとりの存在を認め、尊重し、かかわっていくことが重要なのです。