O・Tさん(女性・年齢30代)のプロフィール
●介護業界歴・・・15年
●介護業界の前の職業・・・コールセンターでの電話オペレーター
●保有資格・・・介護福祉士
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誰からも必要とされていなかった孤独な会社員時代
私は、今年で介護職員歴15年を迎えた、あるグループホームで勤務している現役の介護福祉士です。
地元の短大を卒業した後、約3年半の間、コールセンターで電話オペレーターとして働いていました。
私は、どちらかというと物静かで人見知りをするタイプなので、仕事でもなかなかお客様に対して気の利いた言葉で対応が出来ずに、「貴女じゃ、ラチがあかないから、上司に変わってちょうだい!!」と苦情のお問合せを更に険悪な状態にさせる事もしばしありました。そして上司からは「この仕事に向いてないわ。だって、貴女のトークには一つも良い所が見つからないもの。」とあきれられてしまいました。
仕事の内容だけではなく、会社の同期や同僚にも上手に溶け込めず、いつもひとりぼっちだった事も拍車がかかり、入社して3年目に本気で転職を決断しました。
春に転職の決断をしたにも関わらず、季節はいつの間にか秋にさしかかり、いつもの様に何気なくTVを観ていると、介護施設のドキュメンタリー番組が放映されていました。
認知症の高齢者と若い新人介護職員の軌跡を追った番組でした。当時の私と同じくらいの20代前半の新人女性介護職員が、話しがなかなか通じず、介護拒否をする入居者様に困り、悪戦苦闘をするという内容でした。その新人介護職員も粘り強く対応し、認知症の入居者様と心を通わせ、最後には「貴女がいてくれて良かったよ。ありがとう」と、にっこりと笑顔まで見せてくれたのです。その姿を見て「私、これがやりたい!」と心から強く思いました。
その後、すぐに本屋へ駆け込み、当時発刊していたスクール情報の雑誌を購入し、市内中の社会福祉系の専門学校へ資料請求のハガキを送りました。その後、11月も終わりを迎えて、私は会社を無事に退職しました。一度は引き止められましたが辞める決意が固かったので、あっさり退職が決まりました。
そして12月を迎え、私は当時のホームヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)の資格が取れるスクールへ通いました。一か月半の超短期で資格が取得出来るコースに通い、朝から晩までびっしりと勉強をしました。20代~60代位の方まで幅広い年齢層の人が受講に来ていました。そして翌年の1月の半ばにヘルパー2級の資格を取得し、地元のグループホームへ無事に就職が決まりました。
ついに介護の仕事のやりがいを見つけた!
グループホームは基本的に、認知症高齢者の方の「生活の場」なので、寝たきりの方よりも要介護度が少ない方が入所するのが一般的です。
しかし、私の就職したグループホームには、半寝たきりの高齢者の方も入所していました。
年齢は当時90歳で、背中の骨が完全に丸くなっていて、骨粗しょう症を抱えていました。骨粗しょう症の方は、くしゃみをしただけでも、骨が折れやすくて、もろい状態になっています。
介護初心者の私だけではなく、他の先輩スタッフも、その高齢者の移乗介助は苦手でした。
私は身長が150センチありません。小柄な体格です。移乗介助など力を使う仕事は、とても苦手で「こういう事は、きっと身長の高い人が有利なんだろうな…。」と少々悔しい想いをしていました。
その悩みをリーダーの方に相談したところ、身体の小さな人でも、最小限の力で、自分より大きな人の介助が出来る「ボディメカニクスの原理」を教えて頂くことが出来ました。
次の日から、早速教えて頂いた「ボディメカニクスの原理」を利用して、身体を出来るだけ入居者様に密着して抱き上げると、あんなに悩んでいたのが不思議な位でヒョイと抱き上げることが出来たのです。
これには、入居者様も「よくそんな小さな身体で抱える事ができたね!身体も痛くないし、上手だよ!ありがとう!」と誉められました。
そして、それから、その入居者様との信頼関係が生まれ始めました。夜勤のたび「私ね、アンタが夜勤の日って、すごく安心するんだよ。ホッとするんだ。」と、こっそり、にこにこ目を細めて教えてくれました。
この出来事がとても嬉しく、「少しでも入居者の皆さんの役に立ちたい!」と思うきっかけになりました。
ただ、がむしゃらに仕事をして一年が過ぎていきました。その間に、様々な入居者様を見てきました。薬の時間になると服薬拒否をする方、夜中の徘徊がひどく一晩中眠らない方、トイレの場所が覚えられずに部屋で排せつ行為をする方…。
何度、辛い想いをしたかわかりません。時には、介護の仕事をもう辞めたいと思ったこともあります。しかし、そのたびに思い出すのです。
「アンタがいるとホッと安心する。ありがとう!」という言葉を…。
「介護福祉士取得」という新たなやりがいへの挑戦!
そして、介護職員になってから3年目になったある日。
同期の職員の間で、ある話題で毎日持ち切りになっていました。翌年の1月にある介護福祉士の国家資格の試験のことでした。
私は、前々から試験を受けて、いつかは介護福祉士になってキャリアアップしたいと望んでいました。
ただ一発では受かるのだろうかという不安はありました。しかし、不安よりも、まずは精いっぱい頑張ってみたいという気持ちの方が強かったので願書を提出しました。
それから書店で介護福祉士の問題集を購入し、猛勉強しました。
仕事の休憩時間や、夜勤中のちょっとしたスキマ時間も上手に活用し、無我夢中で頑張りました。その結果、1月の筆記試験は無事に合格しました。この感動は今でも忘れられません!
そして、実技は費用の都合で受験を受ける予定でいましたので、そこから3月の試験まで、実家の母にお願いして入居者の役になってもらい、毎日練習を重ねていきました。
正確に時間を計りながら、本番さながらのシチューエーションで、実技試験の勉強をしました。上手く出来ないこともしばしばありましたがなんとか実技試験も合格しました。
本番のときも、時間通りに課題を終了することは出来ませんでしたが、終始、丁寧な対応を心掛けていたことが試験管にも伝わったようで、無事に合格を果たしました。
この介護福祉士の資格試験に合格したことは、本当に仕事をしていく上での自信となりました。
もし、介護の仕事を続けていきたいと思っている方がいましたら、是非、介護福祉士の試験は受けておくことをオススメします。
受験勉強は確かに大変なのですが、その分、資格で得るものは大きいと思います。就職先によって金額の差はありますが、資格手当がつく場合があります。ごくわずかな金額でも、ありがたいお金だと私は思います。
そして、もしも職場が合わずに転職を考えている場合は、介護福祉士の資格を持っていると、とにかく有利であることは間違いなしです。大部分の福祉の職場では、介護福祉士の資格を持っている人材を確保したいため、スピーディーに仕事が決まることも多々あります。
実は、私も何度か職場は変わっているのですが、介護福祉士を持っているとすぐに仕事が決まり、転職の際も困った経験はありませんでした。受験資格には年齢制限もありませんので、何歳からでもチャレンジ出来ます。
私が受験したときにも、受験者は50代、60代の人も半分位を占めていように感じました。
介護には、あなたのあたたかい気持ちが何よりも必要です
この記事の最初の方でもお話ししましたが、介護職員を始める前の私は、自分にとにかく自信がなく、いつも隅っこで小さくなって他人の目を気にして、おどおどとしながら生きていました。
しかし、介護を初めてたくさんの入居者様から「ありがとう」、「貴女がいるとホッとするの」という声をかけて頂いたとき、自分を必要としてくれる人間がいるんだと分かり、少しずつ自分に勇気と自信が持てるようになりました。
この介護の仕事には、性別も年齢も関係ありません。必要なのは「困っている誰か心に寄り添おう、困っている誰かの手助けを少しでもしたい!」というあたたかい気持ちだと私は思います。
介護は、皆さんもご存知のとおり、「3K(キツイ、キタナイ、キケン)」という嫌なイメージが世間で浸透していますが、本当はそんなに嫌な仕事ではないと思っています。誰か困っている人のために、一緒に頑張ってみませんか?
この記事を読んで頂いて、介護の仕事に少しでも興味を持ってくれる人がいいなと心より願っております。